抗弁事実
原告の不利益陳述(相殺契約による債務の一部消滅)
<要件事実>
①両債権の発生原因事実
②相殺契約の成立
※相殺契約は,民法上の相殺の要件を具備する必要がないから,同一当事者間の相対する債権でなくてもよく(三面契約など),両債権が同種の目的を有さなくともよく,弁済期にあったか否かも問わない(マニュアル第2版420頁)
在来様式の判決書において,例えば,被告が抗弁として主張すべき事実を原告が不利益陳述した場合,その事実は,抗弁の項に,「不利益陳述」などの表題を付して,摘示する(村田ほか・30講73頁,司研・要件事実(1)19頁)。不利益陳述に対する認否の摘示は不要である。
②X・Y,平成17年9月23日,上記量債権のうち1600万円につき相殺合意 ×
間接事実:被告に貸金の一部と土地売買代金とを相殺する意向があったこと
①ー2:Y→X債権の発生原因事実:本件消費貸借契約締結(請求原因事実で主張済み)×
①ー1:X→Y債権の発生原因事実:XはYから平成17年9月23日,本件土地を代金1600万円で購入 ×
間接事実:被告に本件土地売買の意向があったこと
間接事実:本件土地につき平成17年9月23日の売買を原因とする所有権移転登記
甲2 全部事項証明書
甲4 不動産売買契約書(処分証書)
抗弁2(10年経過による時効消滅)
<要件事実>
①権利を行使し得る時期の到来(166条)
②①から一定期間(時効期間)の経過(167条1項)
③時効の援用の意思表示(145条)
③平成19年2月20日,時効援用の意思表示 顕
②平成15年5月17日経過 顕
①請求原因事実④に現れている 顕
抗弁1(通謀虚偽表示)
①表示内容に対応する効果意思が表意者になかったこと
②当事者が,①の意思があるように装う合意をしたこと
Y・X,本件消費貸借契約締結当時,いずれも消費
貸借の意思がないのに,あるものと仮装する合意 ×
<被告の否認理由(間接事実)>
平成4年5月18日,YはXに本件土地を
売却しており,3600万円は売買代金
再間接事実:平成4 年5 月26 日,XY「貸金ではなく売買代金」である旨確認
乙8 覚書 平成4 年5 月26 日
乙10 Xの筆跡のあるのし袋の写真
再間接事実:見積を依頼した事実・時期,本件土地の代金見積額
乙4 見積書
再間接事実:平成17年9月23日より前からXが本件土地を使用
乙1 不動産全部事項証明書( 建物)
乙2の1 営業許可書
乙2の2 写真撮影報告書
再間接事実:Yの本件土地売却の動機(手狭な自宅の買換え)
再再間接事実:被告の新土地購入の事実
乙5 土地建物売買契約書(売主河合修二,買主Y)(処分証書)
乙3の1 日記メモ 「Xから本件土地買取の電話」
乙3の2 日記メモ 「土地の件でXはYに面会に向かった」
乙6 土地建物売買契約書 Yが川尻の宅地売却(処分証書)
乙7 金銭消費貸借契約書 貸主小倉銀行,借主Y(処分証書)
乙3の3 日記メモ 「売買契約締結」
乙12 本件土地売買契約書(買主空欄)
<被告の否認理由>
念書は無効?:木村司法書士に迫られ,本意で無いのに書名した
<原告の否認理由(再間接反証?)>
平成14年ころ締結した使用貸借契約による使用
再抗弁事実
再抗弁1(時効完成後の債務承認による時効援用権喪失)
<要件事実>
債務者が時効完成後に債務の承認をしたこと
(1)債務者が,消滅時効完成後に債権者に対し債務の承認をした場合,時効完成の事実を知らなかったときでも,信義則に照らし,その後その時効を援用することは許されない(最判昭和41年4月20日民集20巻4号702頁。学説は,これ以外にも援用権の喪失といえる場合があるか検討している(遠藤・注解財産法(1)704頁)。なお,債権者の欺講的な方法,威圧的態度等に起因して一部弁済がなされたときは,時効の援用権が失われないとしたものとして,福岡地判平成13年3月13日判タ1129号148頁等がある。喪失否定例として,他に,福岡地判平成14年9月9日判タ1152号229頁がある)。
マニュアル第2版173頁
平成17年9月10日,念書で本件貸金債務の支払約束 ×
甲3 念書
請求原因事実
遅延損害金請求権(附帯請求)
<要件事実>
①元本債権の発生原因事実
②弁済期が経過したこと
③損害の発生と数額(遅延損害金の利率の合意)
③約定遅延損害金は年15% ×
②主たる請求で主張済み
①主たる請求で主張済み
貸金請求権(主たる請求)
<要件事実>
①返還約束
②金銭の授受
③返還時期の合意
④返還時期の到来
④平成5年5月17日経過 顕
③XY返還合意の際,返還時期を平成5年5月17日
とする合意 ×
②X・Y平成4年5月18日3600万円交付 ○
①X・Y平成4年5月18日3600万円の返還合意 ×
甲1 金銭消費貸借契約書(処分証書)
処分証書は、手形や遺言書のように、証明の対象である法律行為がその書面上でなされる文書をいう。書面によらずにできる法律行為であっても、文書によって直接なされたものであれば、その文書は処分証書となるのであり、売買契約書や契約解除の通知書などが、その例である。文書の実質的証拠力の判断は裁判官の自由な心証に委ねられているが、処分証書の場合、判例上成立の真正が証明されれば当然に実質的証拠力も認められ、書面上でなされた法律行為が直接証明される。
私文書については、本人が署名又は押印しているときは、真正に成立したものと推定される(同条4項)。さらに、判例上、印影が本人の印章(印鑑)によって押されたものである場合は、本人の意思に基づいて押印されたものと推定される(最判昭和39年5月12日民集18巻4号597頁)。したがって、本人の印章と文書の印影が一致すれば、本人の意思に基づいて押印されたものと推定され、さらにその結果文書全体が本人の意思に基づいて作成されたものと推定されることになる。これを二段の推定(にだんのすいてい)という。